こうやって前に進む力は、まさしく我々を未来に連れて行ってくれる力であり、希望の光だ。
百万那由多ノ塵SCUMの一言目は、新生BUCK-TICKツアーとして、これほどまでにふさわしい一言があるだろうか。前向きな、新しい希望に満ちているライブだった。しかしそれは過去を忘れたわけじゃない。
「キラメキの中で」と「女神」はまさかやるとは思わなかった曲達である。
新曲かと思うほど大胆なアレンジで披露されたキラメキの中では、過去を今に繋いでいる。あっちゃんという偉大なボーカリスト亡き今、新しいキラメキがある。正直、これからは今の体制で「やれそうな曲」だけをやっていくのだと思っていた。もう聴けなくなる曲もあるだろうが、それでいい、しょうがない、と思っていた。蓋を開けたらどうだ。キラメキは頭になかった。やれそうなんて、ファンの勝手な思い込みだ。アレンジ次第で、過去の曲に新たないのちを吹き込む。ホントに、BUCK-TICKに安易な「やれそう」はないのだ。ファンの想像をはるかに超え、嬉しいサプライズをくれる。
女神は星野さんの歌声が優しく響く。星野さんの歌声は丁寧で、しっとりとじっくりと染み渡る。
どこかあっちゃんを彷彿させるこの歌声で歌われる「絶望という名の君へ」は、今のBUCK-TICKにおいて象徴的な1曲だと感じている。過去を大切に抱きしめながら、未来に進んでいく。優しさに溢れている。美しいメロディメーカーである星野節健在。このメロディを歌い継ぐ人は、まさかの本人だったなんて。星野さんがこれからも新しい曲や過去の名曲をを歌ってくれるのが楽しみで仕方ない。
今井さんと星野さんのタイプの違うボーカルふたり体制によることで、4人になっても幅の広いライブを楽しむことができる。
スブロサの曲たちは、平然とした顔で、新しいBUCK-TICKが進んでいくことを示している。
ステージはツアー初日の仙台より更にパワーアップしていた。今井さんがギラギラの軍帽のようなものをかぶる場面もできていたし、曲に合わせてポーズを決める姿もあった。さすが、あっちゃんのパフォーマンスを横でずっと見てきた人たちだ。真似ではなく、今のBUCK-TICKらしく溶け込んだパフォーマンスとなっていた。
最新の曲と過去の曲がうまい具合に混ざり合っているのも、思わぬアレンジを加えてくるのも、あっちゃんがいた頃のBUCK-TICKそのものだと思ったりもする。そうきたか!という驚きをくれるのがBUCK-TICKだった。
最新が一番かっこいいのもBUCK-TICKだった。
どういう体制になっても、BUCK-TICKはBUCK-TICKなのだ。
あっちゃん亡き今を生きている。
生きていくしかない。
今を楽しもう。