透明感のあるイラストと彩色が魅力的。
この絵柄なら他のゲーム(とくに恋愛もの)もやってみたい。
恋愛もの、と指定してみたのはこれが恋愛ゲームではなかったので。
まあ、恋愛はしていますがテーマではない。と思う。
で、物語が弱いかな、というのはプレイしながらずっと気になっていた。
まず、三島さんが死にたがりなところの描写が弱いような。
なんで自殺未遂をするほど死にたがっているのか、理由を明かされても納得しづらいところがあった。
本人も本当の意味で死と向き合っていたわけではないというのは樹海のシーンで明かされるわけだけど、それまで三島さん本人も死ぬ気でいたのだからやはり納得させるだけの描写が弱いよなあと感じた。
三島さん視点で出来事がしっかり描かれていたら印象は変わったかな?
言葉で説明されても、それで死ぬほどのことか? と思ってしまった。
でもプレイ後にあとがきを読んだら、その辺はわりと作者さんも自覚している部分というか、引っかかった部分は全部ご自分で指摘されていた。
しかし思い返せば自分もそんなによい学生時代ではなかったので、カジュアルに自分の死を願う感情はあった。
そういう思い出をすっかり忘れてしまうのだから、子供に「大人は分かってくれない」と思われてしまうのだわ。
で、誰しもそういう部分を持ち合わせていると思うので、そういう昔の感情を引き出すような、勝手に思い起こさせるような描き方なりエピソードなりがあればもっと感情移入して楽しむことができたかな。
元カノに関しては亡くなっているだろうなと思っていたので案の定。
なんで妹さんが主人公を人殺しとなじるに至ったかの心境の説明がほしかった。
確かに支えてあげられなかったかもしれないが、直接手を下したわけでない相手を人殺しと言って責める理由は何だろう。
なのでてっきり、彼女が死ぬことに直接的に関わってしまったのかと思っていたらそうでもなかった。
まあ色々書いたけれど、あんま重たい物語もしんどくなってしまうので、これくらい爽やかにさらっとして、前向きになれるようなお話はいいなあと思ったですよ。
システム面とかゲームとしての感想。
上下に黒い余白があるところが、物語の雰囲気に合っていてよかったな。
映画みたいな感じで。
テキスト表示はルビをルビとして振れなかったんだろうか。
ルビとしてあれば気にならないのだけど、読みづらい漢字のたびにカッコ書きで例えば「漢字(かんじ)」のように表示されていたのが、なんかテンポを崩しているような。
イラストは綺麗だし、すらすら読める文章だったし、システムも使いやすい。
音楽のチョイスも適切。
きちんとまとまった作品ではあったと思うのでもっと別の作品もプレイしたいと思う。
この作風ならほんわかラブとかのほうが合うのではないだろうか。
あとすごくどうでもよい話。
三島由香は毎度フルネームで書かれるので、そのたびに心の中で(三島由紀夫……じゃなくて由香だった……)と思っていた。
亡くなってしまった元カノも優花さんなのでフルネームで書く必要があったのだろうが、どうして同じ名前なんだろう……?
運命的な?
フルネームのせいで三島由紀夫がちらつくのであった。